浅草と金子光晴

<聖潮>
T14.11.1第2巻第10号浅草寺出版部
この号は一周年記念として浅草特集をしている
鳥居龍三、矢田挿雲、伊原青々園、淡島寒山三田村鳶魚室生犀星、正岡蓉、辻潤岡本綺堂、サトウハチロウ等多士済々の執筆陣、エライ人はおいといて・・・
中であれって思ったのが金子光晴の次の詩があったので引用

十二階

   1

十二階のてっぺんに腰をかける
 日曜日の眺望・・・は花畑だ!

さわやかな風に 塔がグラグラする。
わたしは雲の中に乗出している。

見世物や旗幟 群衆も、
ここからは将棋盤の様に静だ!
・・・・・遠眼鏡をとれ!

Trop petit(トロプティ)だ! 欲望 歓楽 喧噪・・・・
ここはのどかな筑波山と富士だ。

人間の韻律(メロディー)と 悠久の思想 その涯で、
私は その手すりで逆鉾立(しゃちほこだち)をした。



    2
    
 アーク燈が 繁樹のなかで、
細かい靄を紡いでいた。
深夜・・・・
『旦那! あそんでゆきませんか?』
私は、酔って 酔って捨石に眠っていた。
愛しい夜鷹 が作り笑いをして
そばに立っていた。

観音堂は怪異な蜘蛛の様だ 空は朱い。
公園は 森よりも荒寥としていた。
片足を伸ばすと闇空の中に突込んだ。
だが わたしは急に歔欷いた。

あの十二階が
ああ なんという悲劇的な聖かな姿で
あけ方の浄罪界の空に そのとき立っていたことか。
私は合唱した!。
神秘なこの聖女体に・・・・。

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