<キング>S4,9,10月号 モダニズム

S4,9,1発行9月号 
S4,10,1発行10月号
大日本雄弁会講談社 国内定価54銭

広告10号を見ると

(自社出版物を除く)
通信教育ペン字1p  
ライオン歯磨本舗1p  
ぜんそくの薬1p  
心身鍛練・交霊感応気合術>通信教育 Q
便秘薬1p  
イーストカメラ15円講談社代理
クロスゲーム
通信教育1p  
痩身薬1p  
胃薬1p  
ポンテアク号(日本ゼネラル・モータース) セダン型3598円1p  
皮膚病薬
化粧品1p  
英語塾
化粧品 <白美液>1p  
速記講座1p  
ぢ薬1p  
養命酒1p  
音楽通信講義1p
梅毒体毒内服薬1p
電気療養士1p
香水
ナポレオンの蓄音機  
催眠鎮静剤T
自動車学校T
化粧品<美顔水>1p
胃腸薬
わきが治療法
心身強健帯
痩せ薬
産婦人科・小児科医院
時計学校
胃腸薬>広告記事2P
痩せ薬
神経痛薬
換えペン先
ラジウム温灸治療器
結核治療薬(草)2P


 化粧品、自動車、通信教育、蓄音機、万年筆、カメラ、ゲーム等、どれも当時の大衆化(消費)の商品だが、100万部購読を誇った大衆紙<キング>にさえ(いや、だからこそ)モダニズムの影響を見て取ることが出来よう。

 だから、9号の主だった文、記事のタイトル挿絵、作者を以下示せば、当時活躍していた漫画家の大部分がモダニズムの<新青年>で活躍していた者と重なり、符合するのも偶然ではなし、驚くほどのこともない。

各種文芸彩色絵本
二宮尊徳
    画
俳句 谷脇素文 
談笑 細木原青起
川柳 谷脇素文 
和歌 水島爾保布 
民謡 田中比左良
滑稽和歌 水島爾保布 
里謡 田中比左良
警句 細木原青起

10号目次
目のつけどころ
元気を出す秘訣
喋るな!而して行へ
講道館最初の他流試合
欧米流行の大勢(洋行土産話)
父ダミアンの聖愛
五十銭物語(金儲け実際談)
世界人気者出世ロマンス
活劇王 フェアバンクス
 発明王 エディソン
 大統領ヒンデンベルグ
 喜劇王チャプリン
 本塁打王ベーブルース
 聖雄ガレディー(ガンジー
 熱血宰相ムッソリニ
 自動車王ヘンリーフォード
 国民政府の総師蒋介石
 大統領フーヴァー
 等

二宮尊徳 武者小路実篤
(タイトル 挿絵画家 著者の順) 
伝奇小説 怪盗夜叉王 秀峰 前田蜀山
創作 妻の心 唯一 中村武羅夫
時代小説 大醜女物語 長秋 本田美禅
長編講談 三家三勇士 洗崖 大島伯鶴
落語 寄合酒 素文 三遊亭円生
長編小説 万治郎 菊池寛
新講談 よく耐えた秀吉 伊藤彦造 真下醒客
理想小説 死よりも強し 貞雄 鶴見祐輔
長編小説 春遠からず 伊東深水 大下宇陀児 
探偵実話巴里の大強盗
時代小説 風雲天満双紙 富弥 佐々木味津三
飛んだ間違ひ物語 画 宮尾しげを

十月号で東京商工会議所会頭藤田謙一が既雑誌の<講談倶楽部>について次のように述べているが、あながちPRとのみ言えないし、このことは<キング>にも当てはまる。

巻を開けば、偉人巨傑の物語あり、忠臣義士節婦の感銘深い物語あり、一方にまた愉快無邪気な快談漫話、現代大家の小説もあり、泣いたり笑ったり、イヤどうも実におもしろいのは講談倶楽部ですナ。

要は<キング>は青年、壮年層意外に老若男女(少年も含む)すなわち<大衆>を読者ターゲットにしていた。
 
 それ故、野間十八番の立身出世絵巻のみならず、時事性のある野球早慶戦、オリンピック、マラソン大会そして海外情報(海外珍聞面白ニュース)、また婦女子用の家庭セレクション等など写真、漫画、挿絵をふんだんに使い、耳目をそばだたせるようなトピックスにも紙面を割いて、広範囲な娯楽・エンターテイメントの情報を提供しなければならなかった。
 <キング>は<大衆>の関心や人気のある事柄も先行して(または事後的に)採り上げざるを得ないし、逆に言えば、そのときの時代の雰囲気、風俗も講談社流に<健全>なものにアレンジしながらも、映し出していたとも言える。

 <キング>講談社の2大要素である<ためになり>=修身・企業家・国家イデオロギーと<おもしろい>のうち前者を除けば、<おもしろい>であり、昭和初めの当時渦巻いたモダニズムの表層で尖端(先端でなく<尖>)現象だったのは、周知の通り、エロ・グロ・ナンセンスだった。