さらBABA!僕たちのトリップ 前々口上(つづき)

<モクシャ>ハックスレーの夢現(ゆめうつつ)
Aldus Huxley
J.P.Tarcher,inc.1977
http://d.hatena.ne.jp/utu/20041003/p1参照(昔の原稿があったんで)
<知覚の扉>、<天国と地獄>を読んだものなら、その書かれた内容につき議論したくなるだけでなく、彼とサイケデリックスの関係を知りたいと思うのも自然だ。
 その点、本書は、ハックスレーとサイケデリックスとの関係(彼自身メスカリン、サイロシビン、LSD体験をメインにした、これらに対する姿勢)が手に取るように分かるようになっていて、すごぶる興味深い本である。
ちなみに、副題は<サイケデリックスと幻視(ヴィジョナリ)体験に関する記述>となっている。

 ハックスレーは、1931年に独学者レーウインの名著の誉れ高い<ファンタスティカ>という論文を読んで以来、人間とサイケデリックスに関わる諸問題に関心を寄せ、ついには、1953年オズモンド博士の下でメスカリン体験を試みる(後の<知覚の扉>のモチーフとなる)。
 これを機に、人間とサイケデリックスに関する思索に専念し、死を迎える1963年直前にLSDを摂取した。正に、文字通り、サイケデリックスにこだわり続けた小説家、思索家である彼の後半生を関係論文、小説、手記、関係者の証言によって年代順に編集したもの。
 適切な注釈が施されているほか、各章ごとに簡潔なコメントが付されているので、彼個人に対してさほど関心のない読者も、本書を通して彼の世界に容易に入れるように工夫されている。
 これを読んでみて、今世紀の思想家、いや、最後の人文学者(ユマニスト)と言うべき、ハックスレーがサイケデリックスと人間(社会)の諸問題についていかに真剣に、かつ情熱を込め思索していたかわかるとういものだ。