THE SALTON SEA

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ソルトン・シー (2002/米)
The Salton Sea
[Crime/Thriller/Drama]
製作総指揮 ジム・ベンケ
製作 フランク・ダラボン / エリック・ラサール / ブッチ・ロビンソン / ケン・アグアド
監督 D・J・カルーソ
脚本 トニー・ゲイトン
撮影 アミール・M・モクリ
美術 トム・サウスウェル
音楽 トーマス・ニューマン
衣装 カリン・ワグナー
特撮 コーリー・プリシェット / デヴィッド・ソサラ
出演 ヴァル・キルマー / ヴィンセント・ドノフリオ / アダム・ゴールドバーグ / ルイス・ガズマン / ダグ・ハッチソン / アンソニー・ラパグリア / グレン・プラマー / ピーター・サースガード / デボラ・カーラ・アンガー / チャンドラ・ウェスト / B・D・ウォン / R・リー・アーメイ / シャロム・ハーロウ / シャーリー・ナイト / マイケル・リー・アディ / アズラ・スカイ / ジョシュ・トッド / ダニー・トレホ
映画批評空間より

 ドラッグのメセドリン(スピード)中毒やそのシンジケートやら、ダークといえばダーク。そのうえ、なにやらたくらんでいる主人公(ヴァル・キルマー )の役が、なんと、たれ込み屋なのだから。それとツルんでいる悪徳警官。>これでノワールの材料は完璧。その上、さらにその謀みが亡き愛妻へのリベンジ。こう来ては、派手な銃撃戦、オーバーアクションでカタルシス、イッチョ上がりなんて安易なエンタ作り方もできただろうが、そうはしなかったところが良いな。そうではなくて、扱ったのが、やっかいなトラウマ。
 タイトル(南カルフォルニア)近くで、たまたま道に迷って入ったところが、ドラッグラボ(密造小屋)。ひと安心もどこへやら。突然何者から銃撃戦を受け、小屋ごと、まるでハチの巣だらけ。たまたま自分はトイレに行っていて傷は負うものの、かろうじて助かるが、妻が射殺されるのをどうすることもできなかった。それからこのトラウマを持った男は刺青をしてドラッグの世界へ彷徨う。そんな過去が次第に明らかになってゆく。そしてスピードフリークのヴァル・キルマーはデカい取引に臨む・・・・
 一見、イカれた奴らばかり出てくるし、暴力と血の復讐譚と言えるのだが、鏡で自分の姿を見る瞬間クールでありながら自分を失いつつある状況や目的を果たした瞬間自分の頭を吹っ飛ばそうと自殺を図ろうとする場面、さらにマイルス風のランペットの鬱々たる進行コードがこの映画をダークにさせている。しかも、主人公のスタンスはあくまでもクールであろうとする。
十分エンタなストーリーでもあるが、また単なるフィルム・ノワールの秀作というだけでも片手落ちだろう。
 スピードのやりすぎで鼻をぶっ飛ばした、凶暴さとエクセントリックの化身のような密造人・ディーラー(プー・ベア演じるヴィンセント・ドノフリオ )が最後に幼児退行めいた呟きとも自己憐憫とも分からない台詞を吐く>まるでトリックスターだな。
 だが、最初のシーンで燃えさかる家の中でしゃがみ込みトランペットを吹く主人公も>強いて、茶化して云えば、これはこれでもう一つの滑稽な、傷負いのトリックスターか?
だけど、それならその祝祭とは何か?スピードの世界か。復讐を果たした後の屍か?
 ゾッとするような笑いがあるとはいえ、主人公のクールさを裏返せば、喪失感に伴う虚無がぽっかりと傷口をあけている。
ラストで主人公がスピードからも、またかってのミュージシャンの世界からも離れてゆく時喪失感は癒されたのか?
 ところで、僕が釘付けになったのが、プー・ベア、彼がサツの回し者・密告者かどうかをためすための会話とテスト場面がなんとも云いようがない禍々しさ。
実際、飢えたあらい熊か何か知らないが、獰猛な動物が、檻に入っているとはいえ、その不気味な手と鼻面でもって、下半身を裸にされた主人公の一物(勿論フィルムにはうつらないが)を食いちぎりそう>これはホント怖かった、僕怖いんです、去勢場面これだけで18禁だっ!
 しかし、クールだからといって、折角きれいな女の人(シャロム・ハーロウ )
ばかりなのに、エロ気がなかったのには残念。もう一人のきれいな女(デボラ・カーラ・アンガー)も、ヤワではない。サツにたれ込み、それがバレ、そこから逃げている、当のシンジケートの犬だったとは!>この辺はエンタのオチなんだろうけどね・・・

〜へびあし〜
バロウズの<ジャンキー>で50年代スピードでイカれた奴が点描されていたように微かに記憶しているが、これも淡々とした視点だった。ノワールというかゴシックだね。