<イカ(ス)カバー>

泉鏡花
別冊現代詩手帖
1972.1.1
どの作品の絵なのか詳細は分からないが、鰭崎英朋1882-1968の絵。
この人の美人画とか凡庸に思えるが、この水と女人イイな。

泉鏡花は70年代にブームみたいだった。
けど、あの文体のせいでずっと読めなかった。
最近<高野聖>、<照葉狂言>、<外科室>なんかをやっと読んだ。
あの朦朧体とも言うべきスタイルは何なのかな?とにかく取っつきにくい。映像的とか絵画的とか本書の中で評者が口を揃えて言うけど、僕には、朧月夜或いは湖水にかかった霧や霞ようで、ボンヤリしているんですけど。だから(こそ)、お化けの鏡花と思ったんだけども。
鏡花には描写なんてハナカラ眼中になかったのでは。
高野聖>のなかでは、魔性の女(妖怪)も、良いけど、やっぱ不気味だったのは白痴(ばか、ママ)の存在、手術に失敗した子供らしいが、フリークス的。

(ご免(めん)なさいまし、)といったがものもいわない、首筋をぐったりと、耳を肩で塞(ふさ)ぐほど顔を横にしたまま小児(こども)らしい、意味のない、しかもぼっちりした目で、じろじろと門に立ったものを瞻(みつ)める、その瞳(ひとみ)を動かすさえ、おっくうらしい、気の抜けた身の持方。裾短(すそみじ)かで袖(そで)は肱(ひじ)より少い、糊気(のりけ)のある、ちゃんちゃんを着て、胸のあたりで紐(ひも)で結(ゆわ)えたが、一ツ身のものを着たように出ッ腹の太り肉(じし)、太鼓(たいこ)を張ったくらいに、すべすべとふくれてしかも出臍(でべそ)という奴(やつ)、南瓜(かぼちゃ)の蔕(へた)ほどな異形(いぎょう)な者を片手でいじくりながら幽霊(ゆうれい)の手つきで、片手を宙にぶらり。

(http://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/521_20583.html青空文庫より)
鏑木清方の口絵↓<高野聖>M41(既出<名作挿絵全集>より)