ダサイ(タコ)カバー<近世悪女奇聞>

綿谷雪
S54.5.20
青蛙房
良い本を出すなと思っていただけに、ちょっとこれは情けない
クロスもしっかりしているし、箱に良いけどこのデザインは、社名の青蛙房は中国および広くアジアにも信仰のあついという三本足の蛙の神様にまつわる話から来たというそうだが、しかしひどい。

が、救われるのは、著者の内容
明治から世の中をお騒がせした<悪女>のイメージ(神話)とその実相を乖離を当時の新聞、裁判記録や小説類を考証しながら、かつ、著者自身のイマジネールなものを吐露したもの。
 小林清親)以下画像本書より
 <高橋お伝>当然入ってます、お伝斬首の情景では、意外にも悪あがきをして首切り朝右衛門に3度も斬られやっと絶命したそうな。

 死後の話で興味深かったのは、例のお伝の何の話でなく(著者もその肥大化するエロ話を嘲笑すると共に、嘆いているが)、その死後11年目のM22年。その首(髑髏)を保管していた医者宅に訪れたのが、他ならぬ、お伝の元愛人小川市太郎。しかも、かってのこの悪党は僧籍に入り頭陀袋を提げて来た。事情を説明し、渡された髑髏を彼は残った刀傷を愛おしむように撫でて元に返すと、どこともなく立ち去ったというエピソード。
草双紙<綴合於伝仮名書>(河竹黙阿弥
 そして、著者は仮名垣魯文を曲筆と批判しているが、M14.4.25養父高橋九右衛門の依頼を受けた市太郎が柳亭燕枝(落語家)と主催して、魯文が手伝い、お伝の建碑、法要をしたという話。マトモ過ぎるじゃネィか戯作者魯文。
お伝の辞世(魯文が碑に刻ませた)
<新編古今毒婦伝> 

暫くも望みもなき世にあらんより
渡し急げや三の川守

何とも深い絶望
ほか、16名の妖婦・悪女について描かれている。