癊者の告白 平野威馬雄 話の特集刊 1975初版、76 2刷

utu2004-03-23


癊>正確には癮のようだ(疒の中側に隠の旧字)>中毒の意味
小学館日本大国語辞典より

20数年前古本屋で買っていた
その怪しい装丁・デザイン黒を基調に、背はタイトル、著者名丸の金箔押し○というのがおかしい、ちなみに身内の和田誠が手がけていた
一言で言えば、その内容はコカインやクロラールの中毒になった15年間の回想録>赤裸々な告白>週刊誌が喜びそうなネタ(笑)
 再読して、DORUG&SEXのうちSEXが大半を占めているように思えた(はじめて読んだときはドラック資料として関心があった)。
 また、生活に窮し<フロッシー><バルカン戦争><匂える園><ファニー・ヒル>等怪しい出版社から偽名で翻訳していたことや終戦後にばれて捕まったことなども告白しており、内容はほぼ事実に近いものかもしれない、そう思った。
 奔放な(はちゃめちゃな)青春(大正後半から15年間の)回想録であると共に著者に寄り添って言えば、罪からの救済、魂の懺悔録・告白でもある。
 しかし、読んでいる途中、これは太宰みたい、と何度もつぶやいた。センチメンタリズム、ペーソスがあふれている。
 読む人によって好き嫌いがはっきり分かれそうな作品。>題材(テーマ)がドラッグとしても。
 主人公はクラウン、道化としても、同じようなドラッグ体験を記事にしながら書いたトム・ウルフの作品と比べれば、時代が違うとはいえ、何かじめじめした印象をうけるのは単に平野のスタイルや時代背景のせいなのか?