平野威馬雄二十世紀 大和書房発行1980,12,1

utu2004-03-30

「癊者の告白」の後、当時の新刊として売られていたこの本を買っていていたのを思い出し、ひょっとして処分したかもしれないと思いながら、奥の本棚をさがすとあった!
前著の抜粋のほか、詩人の田村隆一と対談<酒とドラッグの青春を大いに語る>で

平野 コカインはやっぱりいいですよ。ほんとに。お酒のほうは、乱雑なような気がする。

田村 そうねえ、酒はダメですよ。そういう点ではダメですが・・・・。

酒派の田村をやっつけてしまう位の怪気炎を吐く平野>笑

 そのほか、<ぼくのさいばん噺>で戦後訳した<匂える園>、<バルカン戦争>で猥褻文書販売の罪で起訴された顛末記>チャタレー裁判には錚々たる弁護陣が敷かれたが、平野の場合はええかげんな検察官と弁護士に災いされ散々だったこと。いくつかのエピソードや詩やら対談やらをまとめ、全体として自伝にしたもの。
 これを再読したが、スタイルが詩人の金子光晴の斜に構えた、江戸風なところを髣髴とさせる。金子より3,4歳若い平野は大正後半の青春期の一時期に金子やサトウ・ハチロー木々高太郎等と<楽園>という詩の同人誌をやっていた。1900年生まれだったのか。
1920モーパッサン選集(新潮社)からはじまってロティ、ヴェルハーレン、ポー、モローワ、メーテルリンク、メリメなど多数の翻訳。

同対談中の田村のつぎの言葉は至言か。

だから、結局、酒を飲まない場合は、ほかのもので酔っぱらっていると思うんだな。平野先生みたいに。人間は何かの中毒だと思うんだよ。人間の精神というものを、ある程度、持続させるためにはね。なにか中毒があると思う。ただ、それを本人が気がつかないだけで・・。