茂田井武(1908〜1956)の画帳、絵物語

思い出の名作絵本
2001,2,28
河出書房新社
もたいたけし
すっかり誤解していた、茂田井武てアーティスト、戦前の人かと思っていたが(戦前にも挿絵(二十世紀鉄仮面・小栗虫太郎、1936)を<新青年>なんかに描いていた)、実は、活躍し、また注目されたのは、童画家としては敗戦後の10年間だったらしい。
東京の老舗の旅館の息子だったが、家庭環境からか、家を飛び出し大陸を経てパリに放浪。その間似顔絵などを売って生活したり、またパリで日本食堂でアルバイトをしたり、ついには手違いで日本へ強制送還される・・・ボヘミアン

少年期のなにかを静謐な、時間が一瞬静止したような情景に託し描いている。至福に満ちたような、それでいて苛立たしいような何か。でも、今振り返ると陶然とするような、どこにもない、記憶。

やはり、ぼくは戦前の画帳(退屈画帳、無精画帳)とかこの絵物語(1939)に惹かれる(以下同書より)
宝船

雨の降る日は、襖や壁間の画や字を眺めたり、向かいの山を眺めたりしていると、鳥がさも遠くへ行くような飛びかたでとんでゆく。