浅草紅団(川端康成)

東京朝日新聞夕刊S4,12,12から連載,
後<新潮><改造>にも載り、先進社S5,12,5刊行
(以下新潮社H11,10,20川端康成全集第4巻からの引用)
 遅まきながら読んでみた(大先生なので敬遠してました>汗 
 
 1930年頃の浅草を根城にする不良少女・少年(チンピラ)の恋愛を絡めた風俗・生態を描いたもの。
 漫然と読むと若干ストーリーは時系列が交差し描かれているため、コラージュ風に)人物が誰なのか一瞬考えるが、当時の風俗を知る上で大変面白かった。
 ハードボイルド風な船上での男女の決闘や大正大震災時小学校避難の回想や遊女の碑にまつわる観音霊験話が入るかと思えば、少年少女たちの暗い生い立ちに遡ったり、この小説形式もそれはそれで(それだから)面白い。
 そして現在進行形で未完で終わるのがいい。

適当に引用してみよう。

http://www.tokyo-kurenaidan.com/kawabata-asakusa1.htm←復元した地図がある 便利(川端康成「浅草紅團」を歩く)

いつ頃のか不明 右下凌雲閣・十二階が見えるから大正十二年(大震災)以前
絵はがき着色写真 右上花屋敷


近代庶民生活誌15南博編三一書房1991,2,28より

近代風に化粧した裸体の踊を乞食や浮浪人が眺めるーこの奇怪な風俗画も浅草だ。

出てくる場所・名所

 地下鉄食堂、隅田川本願寺言問橋浅草観音浅草寺
五重塔 枕橋 サツポロ・ビイル会社 隅田公園 伝法院 演芸館 瓢箪池 仲見世 我妻橋 水族館 昆虫館 富士尋常小学校
6区の興行物街

花屋敷 あやつり人形
 山雀の曲芸 活人形

活動小屋
絵看板
見世物小屋「珍奇なる怪人、腹に口のある」
楽隊 木馬
曲芸団
露店

射的屋
メリイ・ゴオ・ランド
松旭斎天勝
大魔術、ミュウジカル・コミック 空中大冒険曲技

この人ってやっぱエラすぎる人、いや作品!
例えば会話
表現(もともと文章表現うまいとかあまり興味なかったのだが、詩でなく所詮小説だろうとタカを食っていたが、あにはからんや、こら確かにノーベル賞モンだと、あたしぁ土下座しました川端大先生)

そして抜群の間の取りどころ、省略表現の巧者というしかない。
作者の視点 彼らを距離を置きながら見つめる、少しの親密感と暗いシニシズム

騒々しいエログロナンセンス時代

東京にただ一つ舶来「モダン」のレヴュウ専門に旗揚げしたカジノ・フオウリは、地下鉄食堂の尖塔と共に、1930年型の浅草かもしれない。
  エロチシズムと、ナンセンスと、スピイドと、時事漫画風なユウモアと、ジャズ・ソングと、女の足とー

イット IT
チャアルストン
ジャズ・ダンス
フオツクス・トロツト
オオケストラ・ボツクスのジャズ・バンド
カジノ・フオウリ
楽隊
レヴュウ
ボオドビル
ヴァラエテイ
マネキン娘
モダン・ボオイ
モダン・ガアル
モダン節
レヴュウ
電光ニュウス
ネオン・サイン
 日本館、松竹座、観音劇場、昭和座、電気館、浅草劇場

都会交響楽 モダン節
看板「超尖端的大演芸大会」

大恐慌を背景として新聞には

深刻な生活苦から
狂人帝都に氾濫する
各病院とも大入満員
軽症者は続々退院させ入替う


信州女工の10万人失業
家族的 子供
花売り娘
支那人
歴売りの子供
田舎娘
猫取り
乞食 浮浪者 孤児 
テキヤ 客引き 女衒 芸人
変装屋 
ゆすり


また隠語が頻出し雰囲気を盛り上げる

グレ
ヅブ 乞食
ヅケ
ドヤ木 賃宿
オカン 露宿
オタンチン
カブト
エンタ
ビタニノル 旅に出る
スメ 娘


女工誘拐の会話を聞く

コマス たぶらかす
面のハクイ(美しい)
ナゴコマス(色魔)
ガセツウ屋 贋札屋
ベシャルナ しゃべるな
ゴウカイヤ (乞食相手の売笑婦)

私娼の売笑(春)婦の出入りした場所・名前(古い順)
水茶屋 楊枝屋 揚弓屋 銘酒屋 新聞縦覧所 碁会所 麦とろ 射的屋